2020年11月6日の産経新聞に、政府は児童手当の特例給付を、来年度(2021年度)中に廃止する方向で検討すると掲載されました。
しかも、所得制限の算定基準(判定方法)も変えることも検討しています。
これにより、現在特例給付ではない世帯であっても、今後はその対象になる可能性が高まることに。
そんなわけで、今回は
- 【現在】児童手当。特例給付の概要
- 【今後】検討されている特例給付廃止案の内容
について、お伝えしたいと思います。
【現在】児童手当と特例給付
まずは現在の児童手当の概要と、特例給付についてお伝えします。
支給対象
児童手当というのは、子供(児童)に対して支給される手当のこと。
期間は子供が中学校卒業するまでとされています。
支給額
児童の年齢 児童手当の額(一人あたり月額) 3歳未満 一律15,000円 3歳以上小学校修了前 10,000円(第3子以降は15,000円) 中学生 一律10,000円 「児童手当制度のご案内/内閣府」より引用
手当は月額支給されますが、支払のタイミングは通常は年3回(6月、10月、2月)。
1回のタイミングで、4か月分の手当をまとめて支払いされます。
6月であれば2月~5月、10月であれば6月~9月、2月であれば前年度の10月から1月までの手当を支給することになります。
所得制限・特例給付とは?
ただし、上記で挙げた支給額は、全員もらえるわけではありません。
政府は所得制限限度額を設けており、手当を受け取る人が所得制限限度額以上の所得であった場合、支給額が減額されます。
金額は子供が何歳であったとしても、一人あたり5千円となり、そしてこれを「特例給付」と言います。
「手当を受け取る人」とは?児童手当は子供自身は受け取れない
児童手当は、子供当人は受け取ることができません。
児童手当を受け取る人(受給者)とは子供の両親のどちらかで、家庭の中で生計中心者となる人を指します。
両親のどちらも就労している場合は、所得が高いほうが受給者です。
そのほか
- 単身赴任の場合
- 両親が別居している場合
- 海外で仕事だけど、子供は日本にいる場合
などといったケースについては、「児童手当Q&A/内閣府」をご確認ください。
所得制限の限度額
では、所得制限の限度額とはどのくらいのものなのでしょうか。
政府は2020年11月現在、以下のように設定しています。
扶養親族等の数 所得制限
限度額
(万円)収入額の目安
(万円)0人 622.0 833.3 1人 660.0 875.6 2人 698.0 917.8 3人 736.0 960.0 4人 774.0 1002.1 5人 812.0 1042.1 「児童手当制度のご案内/内閣府」より引用
現在の児童手当と特例給付。情報をまとめると…
- 児童手当は子供が中学を卒業するまでもらえる
- 金額は毎月1万、もしくは1万5千円。年3回に分けて4か月分ずつもらえる
- ただし、所得制限を設けており、所得が規定より大きい世帯は、子供1人あたりの金額が月額5千円となり、これを「特例給付」という
特例給付の廃止案とその理由
冒頭でもお伝えしましたが、政府は2020年11月、特例給付の廃止を検討し始めました。
特例給付の廃止案が出た理由
特例給付の廃止などを検討する案が出た理由は、待機児童対策に力を入れるためです。
待機児童対策に力を入れたくても財源が不足しているため、特例給付を廃止しようとする考えが出ました。
特例給付と、そうでない人の児童手当の総額
月に5千円くらいであれば、そんなに痛くないんじゃないの?と思う方もいるかもしれません。
児童手当は総額でどのくらいもらえるものか考えてみると、無視はできない金額です。
たとえば、お子さんが4月生まれで、特例給付対象の世帯だった場合、以下のとおり貰える金額はおよそ90万円
- 1年でもらえる金額が、5千円×12(か月)=6万円
- 中学卒業までもらえる金額が、6万円(1年)×15(年)=90万円
「90万円もらえる」と考えると、なかなか大きいですよね。
ちなみに特例給付ではない世帯であれば、もらえる金額は198万円。
特例給付とそうでない人の手当の差は、およそ110万円もあるということになります。
対象者の見直し案も同時進行
現在特例給付の対象世帯になっていなくても、今後特例給付の対象世帯になる可能性が高まります。
その理由は、所得制限の限度額の対象を変更する可能性があるためです。
共働き世帯は対象になる可能性が高まる
政府は特例給付の廃止とともに、特例給付の判定方法の変更を検討し始めました。
現在は手当を受け取る人(生計中心者=世帯の中で一番所得が高い人)の所得がいくらかを確認して、限度額を超えるか判定していました。
しかし、今後は世帯全体の所得で判定しようとしています。
つまり、今までは夫だけの所得で特例給付にあたるか判断していたことを、今後は夫婦の所得で特例給付にあたるか判断することになるのです。
ただし、政府はその所得制限の限度額の数値自体、もう少し引き上げる可能性も示唆しているので、引き上げ額によっては対象にならない可能性もあります。
特例給付廃止・見直しに対する世間の反応と、憤りの理由
このニュースがヤフーニュースで掲載されたとき、多くのコメントがつけられました。
そのどれもが批判的なものでした。
第一に。そもそも所得制限の限度額設定が低いのではないかということ。
この限度額を少し超える世帯は、「高収入」「裕福」といわれるほどではないですし、どこに住んでいるかによっても生活費もまったく異なってきます。
また、だいたいほかでも負担を強いられています。
学費が無料ではない、税金もかなり高く取られる、自治体によっては子供の医療費の助成も受けられない、などなど。
「いろいろと負担しているのに、さらに削るだなんて…」
生活がカツカツではないでしょうし、5千円がすごくほしいというわけでもない。
ただ、自分たちの世帯をないがしろにしているように感じる。
こうした日本政府の対応は、親たちの不信感へと繋がり、自然と子供たちにも引き継いでいかれる気がします。
所得が大きい世帯ほど、日本を離れる選択も視野にいれるかもしれませんね。
ただし対象の見直しは賛成、限度額の設定は所得1000万円以上で
さいごに。
個人の意見を書くとしたら、対象の見直しについては賛成です。
たとえば現在では「夫が900万の収入で、妻は専業主婦の世帯」では特例給付の対象。
しかし、「夫が800万で、妻が100万の収入の世帯」では特例給付の対象になりません。
「夫が800万円で妻が800万円の収入の世帯」でも特例給付の対象ではないです。
制限をつけるのであれば、公平に。
そして制限をつける理由も、納得がいく内容で提示してほしいと思います。
また、上でも書いたとおり、現在の所得制限の限度額は低いです。
世帯収入・所得で考えるのであれば、せめて所得が1000万円を超える数値で設定してほしいなと感じています。