こんにちは、とはのです。
保育園が突然閉園するケースが増えています。
なぜこのようなことが起こるのでしょうか。
今回は2019年度~2020年度までのケースを中心に、閉園した保育園の原因と要点をお伝えします。
2019年度~2020年度保育園が閉園に追い込まれた事例
どのようなケースかを順にお伝えします。
都内の認可外保育園が倒産と即日閉園。保育士が自主営業(東京都世田谷区)
2019年11月29日、東京都で認可外保育施設「プレスクール マム・クラブ三軒茶屋」が突然倒産と閉園をしました。
運営法人は株式会社マム・クラブ(代表取締役社長:諸川雅子氏)。
元々労働や保育環境について問題が発生しており、保育士や労働組合が改善を求めて団体交渉を求めた直後のことでした。
閉園までの経過、閉園理由とその後
マム・クラブは世田谷区を中心に三軒茶屋以外にも保育施設を運営。
一時期は「モヤモヤさまぁ~ず2」や「いっぷく!」といったテレビ番組にも露出するなど、注目を集めていました。
しかし、徐々に経営が傾き始め、三軒茶屋を残してすべて閉園します。
残った三軒茶屋でも、賃金の支払いが遅れたり、未払いが発生したりするほか、ほぼ働いている時間も休憩時間にされるなど問題が発生していました。
さらに、物が積まれる部屋で子供を昼寝させるほか、子供も使う物品を破損させたまま買い替えさせないなど、危険な状況であったようです。
訴えても改善されることのない状況に、一部が介護・保育ユニオンに加入し、11月26日団体交渉を申し入れました。
そして29日、運営会社の幹部が施設を訪問し、その場にいた保育士や保護者に倒産と同日での閉鎖(閉園)を告げたと言います。
閉園の理由は、業績悪化や資金繰りの行き詰まりとされています。
保護者はおろか保育士でさえ、閉園の事実をこの時聞いたとされています。
その後保育士が話し合い、2019年12月1日(日)に保護者説明会を開催。
翌12月2日(月)からとりあえず2週間、自主運営をする方向を伝えました。
その間の保育士の給与は無償でしたが、寄付でおよそ245万円が集まったため、自主営業期間中の保育士たちの給与相当分にあてることができたそうです。
そして12月16日(月)以降、全児童の預け先の目処がついたとして、12月13日(金)までの自主営業を終了しました。
12月16日(月)の会見で、保育士たちは経営者はもちろんのこと、訴えても見逃してきた行政についても許せないと語っています。
参考・情報元サイト
1次選考終了後の1月に、3月末閉園をお知らせ(東京都豊島区)
2020年3月31日、豊島区の認可している小規模保育所「つくし保育園」が閉園しました。
運営法人はNPO法人「つくしの会」(代表者:島 弘子氏)。
閉園を区が把握したのが、翌年度(2020年4月度)の一次募集を終えたあとです。
※都内に「つくしの会」「つくし保育園」は他にもあるので、間違えないよう注意
(下の「つくしの会・つくしの保育園は他にもあり」参照)
閉園までの経過、閉園理由とその後
1月28日、区の担当者が二次募集について保育園側と相談したときは、保育園側は運営を続ける方針だったそうです。
しかし、その2日後の1月30日、保育園から突然閉園することを伝えらました。
保護者が知ったのは、その翌週の説明会です。
また、一次選考で内定した保護者たちは、急いでほかの保育園の二次募集に応募する必要が出たといいます。
閉園理由は、以下のとおりです。
- 職員不足や運営上のトラブル(「東京新聞web」より)
- 保育士の育成、保育所全体の指導がよくできなかった(「事業報告書等(平成31年度)」より)
【補足】つくしの会・つくしの保育園は他にもあり
東京にはNPO法人「つくしの会」がほかにもあります。
たとえば、今回閉園したNPO法人「つくしの会」の法人番号は「8013305000730」。
所在地は豊島区で、「つくし保育園」も豊島区にあります。
一方、世田谷にもNPO法人「つくしの会」がありますが、法人番号は「8010905001225」で代表者も異なります。
また、世田谷区で「つくし保育園」を運営していますが、こちらは今回の閉園のニュースとは無関係です。
参考・情報元サイト
認定保育園と企業主導型保育施設、突然の閉園(神奈川県川崎市)
2020年3月31日、川崎認定保育園「メロディ宮前平」と企業主導型保育施設「チャイルドランド新城園」が閉園しました。
運営法人は株式会社チャイルドランド(代表取締役:飯倉 妃美子氏)。
保護者に閉園の知らせがいったのは、前日の3月30日です。
閉園までの経過、閉園理由とその後
3月30日、市に保護者から「チャイルドランド新城園」閉園に関して苦情が伝えられ、市が運営法人に確認。
そのときに「チャイルドランド新城園」と併せて「メロディ宮前平」も閉園する旨が伝えられます。
3月31日に法人は在園児の保護者宛に、系列園へ受け入れをする旨を伝えました。
市の対応としては、希望がある場合は周辺の川崎認定保育園などを紹介するなどして、できる限り対応するとともに、法人に対して必要な指導をおこなうとしています。
閉園に至った理由は、以下の点を挙げています
- 3月後半におよそ10人の保育士が退職することになった
- コロナの影響で仕事をやめる保護者が出て、入園希望の園児も減った
参考・情報元サイト
最大手のアスク保育園。都の認証保育園4園が一度に閉園決定(東京都)
日本保育サービス株式会社(代表取締役社長・西井直人氏)が運営する、「アスク保育園」。
全国200以上の保育施設(2020年9月末現在)を運営。
学童クラブは77施設、そのほか児童館なども手掛けているなど、保育運営サービスの会社として最大手です。
そんな「アスク保育園」ですが、2020年9月、今年度末で閉園のお知らせが保護者に通達されました。
閉園するのは東京都認証の保育園4つ。
- アスク雪谷大塚保育園(大田区)
- アスク池袋保育園(豊島区)
- アスク飯田橋保育園(新宿区)
- アスク西新宿保育園(新宿区)
今年度末なので、来年(2021年)3月末で閉園ということですが、年長でない在園児は転園を余儀なくされることとなります。
閉園までの経過、閉園理由とその後
大田区の資料によると、運営状況や今後の需要動向などを踏まえて、決定は令和2年8月24日に開催された運営法人の取締役会で決定したとされています。
また、2020年11月に発表した、日本保育サービス株式会社の「四半期報告書」4ページ目には以下の記載があります。
当地域の待機児童の状況など、環境の変化による収益悪化に伴い東京都認証保育所5園(当期末4園閉園、翌期末1園閉園)及び企業主導型保育所1園(当期末1園閉園)を閉園
日本保育サービス株式会社「四半期報告書」より引用
「アスク雪谷大塚保育園」は定員が35名に対して在籍が24名でした。
利用が6~7割にとどまっていることも、経営・売上を考えるうえで閉園するに至った要因のひとつなのかもしれません。
在園児の保護者に対しては、運営法人は近隣の預け先の情報を提供する・説明会を開くなどとしています。
閉園予定の園について
閉園予定の保育園については公表されていません。
しかし、毎日新聞に閉園対象の4園は「新宿区2園、豊島区1園、大田区1園」と記載があります。
豊島区で現在該当するのは1園のみ「アスク池袋保育園」。
大田区は区役所からの書面で、該当園が「アスク雪谷大塚保育園」と表記されています。
そして、新宿区でアスクが運営している認証保育園は3園あります。
「しんじゅく保育施設ガイド(令和3年度入園版)/新宿区」に「アスク高田馬場保育園は令和4年3月末をもって閉園予定」との表記があることから、日本保育サービス株式会社「四半期報告書」に記載されている「翌期末1園閉園」が「アスク高田馬場保育園」。
残り2園(アスク飯田橋保育園、アスク西新宿保育園)が今年度(令和3年3月末)で閉園予定であることがわかります。
参考・情報元サイト
大手経営も小規模経営も、どちらも閉園リスクはある
上記のとおり、経営母体が大手、小規模、NPO、どれであっても閉園のリスクはあります。
また、認可外だけでなく、認可保育所や市や区が認証した保育所も閉園しています。
こうしたことから、どのような保育園であっても「ぜったい閉園しない」といったことはいえない、ということがわかります。
アスク保育所に関していえば、大手であるがゆえに、利益が最優先の動きにもなっているとも感じられます。
倒産のリスクは少ないかもしれませんが、継続については人情や地域の要望よりも、数値をみて判断していくことでしょう。
認証保育所は閉園するものの、認可保育所については開園予定となっているところから、行政の補助がつく認可を継続し、それ以外は縮小する動きになるのではないでしょうか。
保育園の入園申請するときに、保育園の経営状況までは見ない(把握できない)し、負債を抱えていることなんて知ることができません。
入園希望者が保育園を判断する要素といえば
- 見学
- 口コミ
- 事業継続年数
- 信用度(メディア・HP)
これらを総合的に見るくらいです。
もちろん、子供や保育士にとって劣悪な環境で無理にサービスを続けるほうが問題ですが、
せめて入園した子供が安全・安心に卒園するくらいまでは保証してくれるような対策が必要だと言えます。
※追記(入園希望を出す前にチェックしたほうが良いページ)
「介護・保育ユニオン」のサイトに、団体交渉した記録が残っています。
たとえば、とある保育所では、このままでは団体退職する可能性や児童にも危険があると職員が訴えているものもあります。
できれば問題となっている保育園はどんなところか、また現在も経営状態は変わっていないのかを確認しておくのも、危険回避に役立つかもしれません。