こんにちは、とはのです。
厚生労働省発表の資料によると、平成31年(2019年)の保育所(保育園)などの数は全国28,713か所だそうです。
大小さまざまな保育園がありますが、今回はその中でもとくにひときわ目立つ、デザイン性や機能性が高い、建築美な保育園をご紹介したいと思います。
「保育園と建築」というのはあまり意識をしたこともなく、結びつかない気もしますが、なかにはデザイン大賞を受賞した保育園も。
また、どの保育園も、たんにデザインが優れているだけでなく、どうしたら子供たちが伸び伸びと過ごせるのかも考えて設計されており、子供たちに寄り添うことを第一として設計されています。
ぜひ参考までに見てみてくださいね。
あまねの杜保育園(千葉県船橋市)
「あまねの杜保育園/株式会社 相坂研介設計アトリエ」より引用
千葉県船橋市にある「あまねの杜保育園」。
平成27年4月に開園された認可保育園で、敷地面積はなんと2千平方メートルもあります。
(千葉でこれだけの面積がある保育園は、かなり羨ましい)
2階には屋上菜園、デッキや1階へのスロープがあり、もしも外に出ることができなくても、園内で十分に散歩・運動が可能。
ランチルームは天井を高くして、開放感をつくり、すぐ横の調理スペースはガラス張りで幼児・調理員のお互いが様子を伺うことができます。
また、園の中央には中庭を設置。
どの教室からも見渡すことができる庭は、たんなる観賞用のためではなく、通風の役割も担っています。
子供たちのことを配慮しつつも、省エネを目指したデザイン性のある建物です。
ポイント
建築・設計会社
建築・設計会社は「株式会社 相坂研介設計アトリエ」。
一級建築士の相坂研介氏が代表をつとめていて、住宅、駅前広場の設計などのほかに、家具の設計、出版・講演など幅広く活躍されています。
保育園はあまねの杜以外に、福島県にある「てぞーろ保育園」も手掛けており、こちらもデザイン性の高い保育園となっています。
むく保育園(静岡県富士市)
「むく保育園|教育施設実績|手塚建築研究所」より引用
静岡県富士市にある、「むく保育園」。
平成30年4月1日に開園した企業主導型保育園です。
設立したのは、お弁当の製造や宅配・ケータリングをおこなっている「ひかり株式会社」。小さなお子さんを抱えるスタッフが安心して子供を預けられるようにとの思いから、設立を決意されたそうです。
そんな会社のイメージを受けて、園舎は「お椀」を模した独創的な形になっています。
しかも、室内の中心には柱がない構造になっているため、子供が室内で自由に動き回ることも可能。
園庭にはシャワー・砂場・水遊び場があって、毎日の外遊びが楽しみになりそうな保育園です。
ポイント
建築・設計会社
手掛けたのは「手塚建築研究所」。
手塚貴晴氏と手塚由比氏が設立した研究所で、日本建築学会賞、グッドデザイン金賞ほか、数々の賞を受賞。
子供の為の空間設計を多く手がけていることもあって、文部科学省の研究所で幼稚園の設計基準の制定にも加わった経歴があるのだとか。
また、保育園・幼稚園などの教育施設以外に住宅、医療福祉施設、オフィスなど、幅広く手掛けていて、人気の高い研究所として有名です。
あたご保育園(長崎県長崎市)
「あたご保育園/INTERMEDIA」より引用
長崎県長崎市にある「あたご保育園(現・愛宕ピノキオこども園)」は、複雑な傾斜があった土地をうまく活かして作られた保育園。
斜面や入り組んだ道が多い長崎の街に調和されているため、子供たちにとっても馴染みやすい空間になっています。
また、園内の中央にはまっすぐではない、うねりのある階段があります。
まっすぐではないからこそ、無意識に歩く方向を変えたり、登り・降りのスピードを変えたり、影に隠れてみたり。
階段ひとつとっても、いろいろな想像力を働かせてくれるものかもしれません。
ポイント
なお、2017年には「平成29年度日事連建築賞 国土交通大臣賞」にも選ばれていて、以下のように評されています。
「材料の選択なども堅実で、破綻がなく、機能的にも隅々までよく考えられており、一貫して生き生きとした感覚のリズムが流れている素晴らしい建築である」
建築・設計会社
代表・佐々木信明氏と取締役・佐々木翔氏による「株式会社 INTERMEDIA」。
長崎県島原市に本社があり、大小様々な規模のプロジェクトを担っています。
上でも書きましたが、国土交通大臣賞を受賞するなど、実力・信頼のある会社です。
よしの保育園(青森県むつ市)
「よしの保育園|教育施設実績|手塚建築研究所」より引用
2015年にできた、青森県むつ市の認可保育所「よしの保育園」。
見て一番に驚くのが、保育園の屋根(屋上)にいる園児たちの姿。
屋根の上をこんなふうにグルグル走り回れるようにしようなんて、よく思いついたなとしかいえません。
屋根は傾いており、一番低いところから入ることが可能。
まるでブランコのように、高くなったり低くなったりする景色を駆け回れるなんて、羨ましいですよね。
また、屋根の下の部屋も天井の高さによって用途を使い分けるなど、たんに見た目だけを重視した作りにはなっていません。
デザインだけではなく、そうした魅力も加味されて、よしの保育園は2016年にグッドデザイン賞も受賞しています。
ポイント
建築・設計会社
手掛けたのは「手塚建築研究所」。
すでに紹介した「むく保育園」を建築・設計した会社と同じです。
また、むく保育園、よしの保育園以外にも、デザイン性の高い保育園・幼稚園を手掛けています。
興味のある方はぜひ手塚建築研究所の「Works」内にある教育施設実績ページを見てみてください。
はくすい保育園(千葉県佐倉市)
平成26年12月に開園した「はくすい保育園」。
残念ながら公式HPに情報はあまりありませんが、設計会社のほうにはふんだんに写真が掲載されており、楽しそうな園内の様子をうかがうことができます。
こちらの保育園の変わっている点は、「部屋」がないということ。
保育園は緩やかな傾斜がある土地に作られていて、その傾斜を利用する形で、階段状に保育室を配置しています。
部屋がないことや段差に囲まれているというのはデメリットなのでは?と思うのですが、それは事業主なりの考えがあってのことなのだそう。
同じく傾斜がある土地に建てられた「あたご保育園(長崎県長崎市)」とはまた違う意図、デザインの保育園。二つ合わせて見比べてみるとおもしろいかもしれません。
なお、はくすい保育園は2015年には、第9回キッズデザイン賞の「奨励賞(キッズデザイン協議会会長賞)」、グッドデザイン賞では「ベスト100 + 未来づくりデザイン賞」を受賞しています。
ポイント
建築・設計会社
設計したのは「株式会社 山崎健太郎デザインワークショップ」。
一級建築士で代表を務める山崎健太郎氏の会社です。
上で紹介した、キッズデザイン賞やグッドデザイン賞以外にも国内外問わず様々な賞を受賞。
また、会社HPの「Works」内には今までに設計した数々の作品と、それに対する製作意図が書かれています。スパ&ホテルから、心療内科の診療所。マレーシアの物販店に、ゴールデン街のバー。一見すると、すこし攻めたデザインも多いのではと思うものの、そこにある製作意図はだれかとの調和を大切にするものばかり。
英文でも書かれているので、外国の方の興味の高さもうかがえるデザイン会社です。
興味のある方は、ぜひ「株式会社 山崎健太郎デザインワークショップ Works 」ページへ。
子供たちの発想力・行動力を駆り立てる保育園
今回紹介した保育園は、最初はただ単にデザインにのみ惹かれていましたが、設計意図や保育園での過ごし方を調べてみると、どの保育園もデザインが第一ではなく、子供がどう過ごすかを第一に考えているところばかり。
保育園の数は増えていますし、今後もこうした保育園は増えていくかもしれませんね。
ぜひお住いの地域の保育園を調べてみてください。