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聴覚スクリーニング検査。政府が新生児すべてに実施の基本方針案

聴覚スクリーニング検査。政府が新生児すべてに実施の基本方針案

こんにちは、とはのです。

今回はこれから出産する方に関係する話題です。

2021年12月、厚生労働省がすべての新生児に対して、聴覚検査が受けられることを目標とする基本方針案を出したとニュースになりました。

  • 聴覚スクリーニング検査とは
  • 新生児を対象とするのはなぜか
  • 基本方針案の内容
  • 現在の聴覚スクリーニング検査の実施状況

これらをお伝えしたいと思います。

聴覚スクリーニング検査とは

聴覚検査とは、その言葉どおり「耳の聴こえ」を検査することです。

新生児の聴覚検査の場合、一般的には「新生児聴覚スクリーニング検査」と言われますね。
スクリーニング、とは選別や選別として使われる言葉。
weblio辞書には「医学分野におけるスクリーニングは、集団の中から特定の病気にかかっている疑いのある者を抜き出すこと、および、そのための比較的簡易な検査を指す語」と書かれています。

新生児を対象とするのはなぜか

聴覚スクリーニング検査を新生児から対象とする理由

冒頭に書いたとおり2021年12月10日「厚生労働省はすべての新生児に対して、聴覚検査が受けられることを目標とする基本方針案を出した」とするニュースが出ました。

なぜ新生児を対象としたのでしょう。
その理由は、難聴の早期発見・早期療育は言語発育の上で最重要とされているからです。

早期発見の必要性

先天的な聴覚障害の約半数は、遺伝など関係ありません。リスク因子を持たない児に発生します。つまり、誰がかかってもおかしくない障害です。
新生児聴覚クリーニング検査などで、早期療育が必要な中等度以上の両側聴覚障害の頻度は「1000人分の1」なので、決して低い数値ではありません。

しかし、新生児聴覚スクリーニング検査がおこなわれないと、難聴に気づく可能性が遅れます
家庭では赤ちゃんとの会話はだいたい対面でおこなうため、赤ちゃんが仮に聴こえなかったとしても、視覚情報によって赤ちゃんが反応するため気づきません。
2歳頃になってきてようやく言葉が出ない、後ろからの呼びかけにことに気づかないことから難聴の可能性に行き着くことになります。
そのあとに検査、治療の開始は3歳近くになってしまうことが想定され、発達に及ぼす影響が出てきます。

早期療育の必要性

仮に聴覚障害があっても、適する療育をすることで、言語機能を向上させ生活の質を高めることができます。

ではなぜ早期療育が必要なのか。
これはいくつかのエビデンスからも明らかです。

たとえば、Korver AMH et al. JAMA(2010)では、生後9か月前後の自覚的聴力検査と新生児スクリーニングで、聴覚障害と診断された小児の3~5歳時の発達に及ぼす影響を比較
新生児期に検査を実施した児の方が、発達転帰(症状の経過や結果)とQOL(Quality of Life、生活の質)が有意に良好であるとされています。
また、東大耳鼻咽喉科からは「発見年齢が早いほど有意に言語性IQが高くなる」といった報告もされています。

  • 新生児聴覚スクリーニング検査によって、早期療育に至る確率は20.21倍上昇
  • 生後6か月以内に療育開始すると、コミュニケーション能力良好となる確率は3.23倍上昇

こうしたことから、以下が望ましいです。

  1. 新生児聴覚スクリーニングを生後1か月で終了
  2. 生後3か月までに精密検査をおこなう
  3. 難聴が判明した場合には生後6か月までに療育訓練開始が望ましい

新生児聴覚スクリーニング検査の流れ

新生児聴覚スクリーニング検査の流れ

新生児スクリーニング検査の場合、ほとんどの場合が出産病院で産後入院中(おおむね出生後3日以内)におこなわれます。
2021年現在は検査必須とはなっていないため、親が同意書を提出・費用を支払うことで受けることができます。

検査は自動ABR(自動聴性脳幹反応)と、OAE(耳音響放射)の2種類があります
どちらを使うかは医療機関によって異なりますが、どちらも痛みもなく検査による肉体的負担はありません

産後入院中におこなう理由

入院中に聴覚検査をおこなうおもな理由として、次のことが挙げられます(日本産婦人科会のHPより引用)

  1. 出生直後の赤ちゃんは眠っている時間が長く、検査を実施しやすい。
  2. 検査に適した状態(ほ乳直後など)を選んで検査を実施できる。
  3. 入院中は、再検査を実施しやすい。
  4. 両親への説明に十分な時間が取れる。
  5. ベッドサイドで検査できるので、検査のための特別な場所は不要である。
  6. 先天性代謝スクリーニングも入院中に実施しているが、出生病院入院中が全出生児を最も把握しやすい。
  7. 新生児期は検査結果に影響を与える、滲出性中耳炎が少ない。

12.新生児聴覚検査に関するQ&A・新生児スクリーニング検査マニュアル/日本産婦人科会」より引用

もしも「要精密検査」だったら…

もしも「要精密検査」だったら…。

とても不安なことだと思います。
ただ、変な情報に惑わされないで、まずは状況把握とこの先どういった選択があるのかを確認したほうが良いでしょう。
医者からも何らかの指示などがあるかもしれませんが、以下の冊子(PDF)が情報がまとまっていて、とてもわかりやすいです。
要精密検査と判断された親御さんからよく寄せられる質問に対して丁寧に正確に回答されているので、不安がすべて拭えないかもしれませんが多少落ちつくと思うので一読をしてみてください。

新生児聴覚検査・基本方針案の内容

※基本方針案については発信元となるはずの厚生労働省のページに記載がなかったため、報道した読売新聞オンラインの内容を参照とします。

報道の内容によると、基本方針案は「生まれた子供が、生後1か月までに医療機関で聴覚検査が受けられる体制を都道府県に求める」ということを柱とするとしています。
公費負担による検査を推進するほか、妊婦健診などで検査の情報提供をおこなうことも盛り込むとのこと。

ただし、現段階でその公費負担が全額なのか一部助成となっているのかは不明です(2021年12月10日現在)

聴覚スクリーニング検査の実施状況

今回政府が基本方針案を出しましたが、それよりも前に自治体によっては補助しているところがいくつもあります

たとえば千葉県であれば令和3年4月の段階で、県内全市町村が検査費用の一部助成を開始しています。
東京都も都内の市区町村が対応しているほか、神奈川県や埼玉県でも一部市町村で助成をおこなっています。

助成金はだいたい1500円~3000円が多いようです。
一度お住いの地域でどのような助成をおこなっているか、確認してみてください。

新生児聴覚スクリーニング検査で、子供にベストな選択をする

私が出産したときは自費でしたが、新生児聴覚スクリーニング検査しました。
それは単純に病院から簡単な説明と承諾するかのA4の紙を渡されたからに過ぎません。
それがどれほど重要なのかの情報は少なく、ただなにか危険性があるかもしれないなら、なんとなく受けておいたほうがいいんだろうといった軽い気持ちでおこなった覚えがあります。
当時助成もなかったこともあって、もしかしたら検査しない人もいたかもしれませんね。

今後は「公費負担で推進」とあるので、なぜ公費負担されるに至ったのか、出産前講座などで新生児聴覚スクリーニング検査がどれくらい重要なのか、たとえば出産前学級などで情報を伝えておいてくれると受ける側の意識も違うと思います。

また、まだ基本方針案を出した段階であるため、出産予定日に補助がまったくない市区町村にお住まいの方もいるかもしれません。
もしくは聴覚検査をおこなっていない病院での出産になる方もいるかもしれません。

しかし、たとえそうだったとしても、以下の聴力検査機関などで、できるだけ新生児聴覚スクリーニング検査を受ける選択をしてもらえたらと思います。

新生児聴覚スクリーニング後・乳幼児健診後の聴力検査機関一覧
http://www.jibika.or.jp/citizens/nanchou.html

万が一、お子さんに何らかの症状があったとしても、そのときお子さんにとって一番ベストな選択ができるのではと思います。

 

【参考サイト】


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今回の記事は以上です。お読みいただきありがとうございました。

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